サウジ女性 黒衣の下の素顔 日本ブームとサブカルチャー(産経新聞投稿済の記事より)

サウジ女性「黒衣の下の素顔」
日本ブームとサブカルチャー(産経新聞 投稿済の記事より)

サウジ女性の間で、ちょっとした日本ブームが起きている。サウジに住む女子学生からメールでアニメやジャニーズについての質問が届く、そんなことは珍しくない。日本サークルができた女子大学も多く、アニメ似顔絵コンテストでは日本人は大歓迎され、彼女達のTシャツに書かれた自筆の「かわいい」という日本語は胸の鼓動で踊っている。以前、経産省に提案し実現したサウジ女性子供市場調査(略称)でジェッダ市のエファット大学を訪問した際、アニメのコスプレを買うため来日した経験があるという女子学生もいた。
このブームはどこからきたのだろうか。6年ほど前の断食月、日本を取材したTV番組が毎日報道され、日本人の礼儀正しさや正直さが絶賛された。また、伝統文化を継承するために毎年国が開催する文化祭典ジャナドリア祭では、日本がゲスト国に選ばれ日本館が開かれた。しかしそれとは別に、ごく自然に日本のサブカルチャーが衛星テレビ番組やゲームなどを通じサウジの若者に受け入れられている。日本人と感性が近く義理人情に厚い彼らは、他国のものよりも日本作品に心を動かされるという。それはネットの普及によりさらに加速し、アラビア語の日本アニメサイト「アラブオタク」は活況を呈している。
サウジアラビアは、その情報が少ないだけに誤解されている点が多い。報道される映像は、多くが米国からの受け売りだ。米国政府や報道機関のフィルターを通した映像が日本で流れている。だが、それも無理はない。何故ならこの国は半・鎖国とも言える状態だからだ。そもそも入国ビザ取得が難しく、報道機関への取材許可は限定的だ。その上、イスラームの宗教的理由から男女の世界は明確に区別されており、女性の世界を取材することが許されることはごく稀だ。
サウジ女性は差別されているという片寄ったイメージを持つ人がいるが、その実、日本女性よりも恵まれていると思われる点も少なくない。たとえばイスラームのシャリーア法により7世紀から女性の相続権は認められているし、離婚した際の慰謝料は予め結婚契約書に記載されている。20世紀になって初めて女性の権利が明文化された日本と比べると、その先進性に驚かされる。
一方、サウジで懸案となっている「女性に運転免許を解禁するか否か?」という論争については未だ賛否両論だが、運転免許解禁運動に長く携わる女性リーダー達に取材した際、こう熱く語ってくれた。
「運転は危険、と反対しているのは保守的な女性達。女の敵は女です」
現地の女性は、アバーヤという黒いコートを被りスカーフで髪を隠す。首都リヤードでは顔全体、つまり目すら覆い隠している人が多い。運転を許せば、安全のために目や顔を出す人も増えるだろう。サウジ政府は宗教界にも配慮し、難しい舵取りを迫られている。
黒いアバーヤをひとたび脱げば、そこには経済的に恵まれた現代っ子のサウジ女性が現れる。流暢な米語を話し、一日5回の祈りのあとネットでアニメを観る。拡大してきた女性の権利や教育を謳歌している彼女達が、将来表舞台に出てくることは必至だ。今後どのような変革がなされていくのか。世界最大の原油生産国であり日本の最大原油輸入先サウジから、日本は3・11のあと二千万ドル分の支援を受けた。日サ投資協定も結ばれさらに強い関係となったこの国から、ますます目が離せない。

アラビアの笑い話:ジョハー①

ある日、ジョハーが大切にしている愛しいロバが、突然姿を消してしまったので、ジョハーはあちこちを駆けずり探し回った。

ところが、近所の人々はジョハーがこんなことを言っているのを聞いた。「アルハンドリッラー、アルハンドリッラー(神様に感謝。すばらしい)」

そこで、ある男がジョハーに尋ねた。「ロバがいなくなったのに、素晴らしいのか?」

ジョハーは、こう答えた。「そうとも。もし私があのロバに乗っていたら、私も一緒に迷子になるところだったからね」