アラビアの笑い話:ジョハー④鍋

アラビアの笑い話:ジョハー④

ある日、ジョハーは家でパーティーを開くため、隣の家に大きな鍋を借りに行った。そして翌日、その鍋をすぐに返しにいった。隣の家の主人は言った。

「この大鍋に入っている小皿は何だい?」

「鍋が子供を産んだんだよ」

ジョハーがそう言うと、初めは目を丸くしていた隣の主人は、嬉しそうにその大鍋と小皿を受け取った。

そして、ジョハーが翌月もまた同様にパーティーのため大鍋を借りに隣に行くと、隣の主人は快く鍋を貸してくれた。翌日になると、すぐにジョハーは大鍋に小皿を一枚付けて、返した。こんなことが半年間、毎月続いた。

ある日、またまた大鍋を借りにジョハーが隣に行くと、またまた隣の主人は快く貸してくれた。ところが、今回は翌日になっても、数日たってもジョハーが大鍋を返しに来ない。そこで、隣の主人はジョハーの家のドアをたたいた。すると、ジョハーが泣きながら出てきた。

「どうしたんだい、ジョハー。」

「実は、鍋が死んでしまったんだ。だから、もう返せなくなった」

隣の主人は驚き、そして大笑いして言った。「馬鹿者だな、ジョハー。鍋が死ぬはずないだろう。早く返せ」

するとジョハーは言ってのけた。「馬鹿者はお前だよ。鍋が子供を産むのを信じたのに、死ぬのは信じないのか?生まれる者は、いつか死ぬ。そういう運命だ」