朝日新聞 8月31日(水)朝刊に掲載されました。

サウジアラビア王国の副皇太子、ムハンマド・ビン・サルマン殿下が来日されました。
サウジアラビアで今、最も注目されている実力者です。また、親日家でも有名な方です。

朝日新聞社の依頼により、来日を記念しての特集にサウジアラビアと日本の未来について寄稿させていただきました。

朝日新聞社 8/31朝刊より

鶏もも肉のオレンジ煮

オレンジの香りと甘さが鶏肉をコク深く仕上げてくれます。

そして、アラブ料理の食材にかかせないサフラン。このチキン料理にもサフランを使っています。
日本ではびっくりするような値段のサフラン。
現地では日本に比べれば値段も安く手に入りやすいものですが、やはりおもてなし料理で使われることが多く、普段はターメリックで代用している家庭も多いとか。

 

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サラデ.ヒャール(夏野菜サラダ)

暑い日か続きますね。
こんなときにピッタリなのが、簡単にできるアラビアのサラダが「サラデ.ヒャール」

トマト(ゴジェファラギ)、玉ねぎ(ピャーズ)、きゅうり(ヒャール)をさいの目切りし、塩、コショウとぶどうジュースであえます。

ぶどうジュースを使うのがポイントです。
さっぱりして美味しいですよ。

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どんなコネでも活用すべし

アラブ社会では「飛び込み営業」や「一見さん」はほとんど相手にされない、と言っても過言ではないだろう。
ところが逆に、誰かの紹介やツテをたどってアポを取ると、とたんに態度が変わる。日本でも、病院や料亭、美容院などに行く時に○○さんの紹介だと言っておくと偉い人があいさつに来てくれるのと似ている。

相手の立場になって考えてみれば、そりゃあ、素性の知れないヤツよりは安心だろう。どんな小さなコネでも構わないので、紹介者を探すことだ。
アラブ人はだいたいおせっかいで世話好きなので、周りの人に、
「○○を紹介してくれる人はいないだろうか?」
と言ってまわっていると、誰かしらがツテを探してきてくれる。知り合いの隣人の親戚が紹介してくれるそうだ…というように、一見まったく無関係なつながりでも構わないのだ。
紹介者がいると、その紹介者の顔、メンツをつぶさないために、律儀に話を聞き、対応してくれるのが、アラブ人である。

紹介してくれる人は誰でもいい。宿泊中のホテルのオーナーや支配人、たまたま入った店の気の良いご主人、どんなチャンスも逃さずにまずは世間話をし、
「実は困っていることがあるのだけど・・・」
と切り出せば、たいていは親身になって話を聞いてくれる。とにかくコネを探してみよう。

アポをとって一度会ってしまえば、こっちのもの。お土産でも持って訪れ、興味をそそるような情報を出し、次に会う日時を決めてしまう。
そして二回目に会う時にはもうあなたは「一見さん」ではない。親しみを込めて大げさにあいさつし、気持ちを柔らかくした上で、さあ、いよいよ本題にとりかかることができる。

 

「アラブ人の心をつかむ交渉術」 河出書房新社より

イスラームの刑罰

イスラームの罰則が非常に厳しいことは、よく知られている。
脅かすわけではないが、万が一にも無知から法を犯すことのないよう、簡単に刑罰を紹介しておこう。

賄賂、利子の取得、文書の偽造、詐欺、偽証、軽い殴打、少額の窃盗などに対する刑を「タアズィール刑」と呼び、ムチ打ち、禁固刑、財産没収などが科せられている。これは、裁判官が自らの力量でその刑の重さを決める。

これに対し、クルアーン(コーラン)などで言及されているために量刑を変更できない「ハッド刑」というものがある。たとえば、飲酒すればムチ打ちの刑、窃盗は手首切断、追い剥ぎ・強盗は右手・左足の切断、故意の殺人ともなれば死刑である。

また目撃証人4人の証言や本人による4回の自白によって姦通罪が確定した場合、未婚者であれば大衆の面前でムチうち100回、既婚者でなら石うちによる死刑である。
しかし、これらは、あくまでイスラームの基本刑罰なので、国によっては事情はさまざまである。普通にビジネスをしている限りは、何ら支障はない。
また、このような刑罰が厳しいからこそ、一般的にアラブ社会は治安が良いのだ。

「アラブ人の心をつかむ交渉術」 河出書房新社より

 

お祈りはエクササイズ

この国に来ると、まず初日、誰でも三つのことに驚く。
近代的で美しい空港や町に驚く。
全員が同じ民族衣装をまとっていることに驚く。
そして、極めつけ、突然始まるサラート(礼拝)に驚く。

妙なお経のような歌(?)があちこちのモスクから聞こえたかと思うと、空港の中でも、電車の中でも、高速道路の道端でも、あたり構わず絨毯を広げ、おでこを地にすりつけ、アラーに祈る。
目の前でいきなり、これやられたら、びっくり仰天。
何度見ても、この国中で行われる突然の一斉のエクササイズに慣れることがない。

おまけにこのお祈り、一日5回。早朝四時頃、いくつものモスクのスピーカーからこの歌がガンガン流れて不協和音をかなでる。慣れないうちは驚いて目がさめてしまう。
また買い物をしようにも、お祈りごとに3、40分店が閉店するので、常に新聞に出ている「本日のお祈りタイム表」をチェックしなくてはいけない。
日の出、日の入りの時刻によって毎日少しずつ時間がずれるからだ。

しかし、古くから部族間に伝わる単調な音楽しかない国ではこの「お祈り呼びかけ歌」、なかなか人気があって、ムアッズィン(歌い手)によってはまるでアイドル歌手の音楽テープのように売られている。
声に恋する乙女もいるとか。

また、モスクでお祈りする前には、脇にある水道で一列になって「顔、手足を洗う」。
日本の神社でも教会の礼拝堂でも、祈る前に「罪を水で流してお清めをする」のはとても面白い共通点だ。

モスクへ異教徒は入れない。しかし、トルコやモルジブなどでは、観光客用に公開されているところもある。必ず、ハダシになって大理石の上をペタペタ歩いて入る。
ガランとした中には、信者からの寄付の絨毯が幾重にも敷いてあって、この上でひたすらメッカの方角に向かってお祈りする。

モスリムの必需品、お祈り用絨毯とメッカ磁石(世界中どこにいてもメッカの方角を探し当てられる磁石)、これをお土産にほしいと思ったのは私だけだろうか。

 

「ハルム・アラビアの夢」 大和出版より

砂漠の民のルール

一見、とっつきにくく、怖そうに見える。
しかしその実、その人となりは、とても温かい。
厳しい自然の中で暮らしてきたからこそ、外には厳しく、中には優しい。
いったん心を開けば、義理人情にあつい、とても気持のいい人たちだ。

砂漠の民のルールとして、
「旅人には水を与えよ、食事を与えよ」という言葉がある。
砂漠で迷っている人を見つけたら、相手が誰であろうとも貴重な水をふんだんに与える。
それがルールだ。
相手がたとえ、敵であろうとも、素性は聞かない。

困っている人は、見ず知らずの人でも助ける。
スーク(市場)で小物入れを置き忘れたら、長い距離をずっと走って追いかけてきて、届けてくれた子供。
すぐに立ち去ろうとするその子にチップを渡そうとしたら、決して受け取らなかった。

「○○がなくなった‼」
と騒ぐと、すぐに人々が集まってきて、「なんだ、なんだぁ?」とばかり必死で探してくれる。
いつの間にか、「ワタシ、少し日本語話せます」という人まで登場する。
おせっかいなまでに親切な人たちは、「見て見ぬフリ」をしないのだ。

困ったことがあったら、その辺の人に英語でも日本語でもいいから、とにかく聞いてみる。
言葉が通じなかったら、その人はきっと誰かの言葉の通じそうな人を連れてきてくれるだろう。

当たり前のことを、当たり前として受けとめている人々。
なんだか、忘れかけていた「昭和のあのころ」を思い出させてくれる。

 

「不思議探検サウジアラビア」 大和出版より

断食(ラマダン)

ヒジュラ暦九月の一カ月間、日の出から日の入りまで飲食・タバコ・欲望を絶つ。

ヒジュラ暦(太陰暦)では一年が354日、つまり西暦より11日少ないので、同じ九月でにその分だけ毎年季節が繰り上がっていく。
断食とは言っても、日中の間だけなのだが、ラマダンが夏季に当たっているときに、水一滴飲めないのはかなりつらいそうだ。
しかい断食はお祭りであり、日没後は家族で豪勢な料理を食いだめする一大イベントなのである。

「不思議探検サウジアラビア」 大和出版より

ヒジュラ暦(イスラム暦)

イスラーム世界で伝統的に使用されてきた時は、ヒジュラ暦(イスラーム暦)と呼ばれる、一年が345日の太陰暦(月の運行を中心とした暦)だ。
しかし現在、ビジネス世界では我々が通常使っている西暦(太陽の運行を中心とした太陽暦)が主に使用されているので、何ら心配することはない。
ただし、宗教行事などはヒジュラ暦で割り出されるため、西暦とヒジュラ暦が併用されているカレンダーを入手しておくことは、不可欠だろう。

万が一、ヒジュラ暦でアポイントメントを取ってしまった場合、確実に会えないどころか、信用までなくしてしまう悲劇が訪れる…。

ヒジュラ暦の紀元元年は西暦で言えば622年だ。まだイスラームが人々に認められていなかったこの年、預言者ムハンマドが自分の教えを嫌う迫害者たちから逃れるため、弟子たちを連れてマッカからマディーナに移り住んだ。この聖遷(ヒジュラ)の日がヒジュラ暦元年に当たるのだ。

この暦では、一日の始まりは日没であり、一カ月の始まりは新月だ。
一カ月は約29.5日で三年に一度うるう年がある。

 

「アラブ人の心をつかむ交渉術19の掟」 河出書房新社より

男女交際&結婚事情(その4「離婚・離婚後」)

冷静な状態で夫から三回「離婚宣言」がされ、「待婚期間(女性が妊娠していないことを確認する期間。約三カ月)」が終了すれば、離婚成立で別居する。
だが、この待婚期間のあいだにヨリが戻ることも少なくないらしい。

妻が怒って家を飛び出したりせず、冷却期間があることで「後悔しないで済む結果」を導くなんて、なんと心憎いシステムだろう。このようなことまで細かく定めているイスラム法は、「民法&儒教的心構え」も兼ね備えているようだ。

参考までに、慰謝料は「結婚結納金の倍」ともいわれている。いわゆる「倍返し」か?
ビンボウ人は結婚もできないが、離婚はもっとできない、ということだ。

◎離婚後

離婚した女性は案外珍しくない。そして皆、金持ち。慰謝料をガッポリもらっている上に、実家のお世話になっていれば、出費も少ない。ましてや仕事を持っていればなお金持ちだ。
姪っ子たちを可愛がって「小姑」として安穏と暮らすのも、再婚に力を入れるのも、自由だ。

一方、離婚した男性は、またせっせと働いて次の結婚のために「結納金」貯金をする。

 

「恋するサウジ」 角川書店より