9つのタブー その3「足の裏を見せるな!」

足の裏を見せる事は、相手を侮辱することになる。アラビア式のリビングルームで床に座る場合はあぐら、または立て膝と言う正しい座り方をしよう。
横座りなどをすると、足の裏を見せることになってしまうから、注意が必要だ。

足を組むのもよろしくない。
英国人のブラウン氏は、商談の際にいつもの癖で足を高く組んでしまったところ、クライアントのドバイ人に大変不愉快な表情されたそうだ。

その後クライアントは「急用ができた」と言って席を立ってしまい、契約不成立に終わったと、嘆いていた。きっと、ブラウン氏の態度が「偉そうに「見えたのだろう。ちょっと人を威嚇するような風情の人だから、損してしまったのかもしれないが、このようなちょっとした行動がアラブ人のプライドを傷つけるのだ。

「アラブ人の心をつかむ交渉術」 河出書房新社より

9つのタブー その2「犬を見せるな!」

犬はそもそも卑しいものとして扱われている。特に、唾液は不浄とされている。
遊牧民のテントに行くと、だいたい犬を飼ってはいるが、それは門番や狩りに使ったり、羊を追うためであり、決してペットとしてではない。ラクダ、羊という動物が「財産」として扱われているのに対し、犬はランクの低い動物として見られているのだ。

ある大手総合商社に勤めるIさんは、トラッドな英国スタイルのファッションが好きだ。
ある日、わかっていながらもついうっかりと小さな犬がドット柄のように散っているネクタイを締めて、アラブ人の顧客の事務所に行ってしまったそうだ。

「いやぁ、うかつでした。みるみる相手の表情が硬くなり、とても不機嫌になったのです。
その視線の先にはこのネクタイ…。最初は何が原因かすぐにはピンとこなかったのですが…。おかげで商談はまとまらず、すぐに帰ってきました」

泣きそうになっているIさんを笑えない。ついうっかり…、のミスが命取りになることもあるのだ。
とにかく、自宅で飼っているペットの犬の写真など、アラブ人には見せびらかしたりしない方が、無難である。

「アラブ人の心をつかむ交渉術」 河出書房新社より

9つのタブー その1「左手は使うな!」

食事の際に左手を使ってパンをつかんだり、左手で人にものを手渡したりしてはいけない。
なぜなら、左手は「不浄の手」とされているからである。

田舎に行くと、今でも古いアラブ式のトイレを見ることができるが、形はいわゆる和式にそっくりだ。その便器の横には必ず、水の入った大きなポットが置いてある…。伝統的には、アラブでは用足しのあと、左手を使って水でおしりを洗い流した。つまり、「元祖・手動ウォッシュレット」である…。

そんな理由から、左手は不浄の手とされてきたのだ。トイレは左手で、食べる時には右手で、というのが清潔を保つための知恵であり、伝統であった。今では多くの場所で洋式便器にトイレットペーパーというスタイルになっているが、左手を嫌うという習慣はそのまま残っているのだ。

「アラブ人の心をつかむ交渉術」 河出書房新社より

ゴールド

アラブといえば、やはり「金」。女性は伝統的に、22金のアクセサリーを「貯金」としてジャラジャラ身につけていた。
いまだに、金のバングル(腕輪)を腕に何本もつけているオバアサンを、田舎では見かける。
買い物をするたびに、このバングルを換金するのだ。

小さなネックレスを買っている日本人の横で、金何キロと買っているアラブ女性をみると、やはり「金」は財産なのだ、と思い知らされる。

最近は22金ばかりではなく、日本人や欧米人好みのシンプルな18金、ホワイトゴールドを売っている店も多い。ダイヤとの組み合わせも人気の的。また、有名ブランドそっくりサンを作っている店や、オリジナルデザインをオーダーできる店も少なくない。

値段は量り売りを基本とするので、「これはデザインが特別だから・・・」と言われても、必ず「重さ」×「本日の金の世界相場:ドル/グラム」で基本の価格を押さえてから、デザイン料を極力小さくすることが、アラブ式『ゴールド買い物』術だ。
値切れば、「本日の相場」より、なぜか確実に安くなる。

 

「恋するサウジ」 角川書店 より

アラビアン・ネーム

「イスラム世界で一番多い名前」をご存じ?

答えは、モハメッド。町中で「モハメッド‼」と呼べば、何十人も振り返ると言われるほど。

そして、アラビア人の名前についてのもう一つの特徴は、長いこと。「寿限無(しゅげむ)、寿限無・・・」にも負けない長さ。例えば、「アブドゥラ・ビン・サレー・ビン・アブドゥラ・アジース・アル・モバラク」。なんで、こんなに長くなってしまうのかというと、自分の名前の中に、お父さん、おじいちゃんの名前が加わっているから。さらに部族名が苗字として入るからややこしい。

私たちから見れば、チンプンカンプンでも、アラビア人にとってみれば、とても理にかなったスグレモノらしい。その理由は第一に、名前を知れば、血筋、家系図が見事にわかってしまうこと。
名前が一種の身分証明書になる。どこの馬の骨ともわからないヤツと付き合うなんてことはない。安心、安心。第二に、遺産相続の行き先がキチンとわかるので、揉めごと防止になる。
女性の場合もまったく同様で、結婚してからも、名も苗字も遺産相続権も変わらない。

ところでさっきの名前を分解してみよう。アブドゥラは「神のしもべ」という意味の本人の名前であり、ビンは「○○の息子」を表す。つまり、モバラク族アブドゥラ・アジーズ(祖父の名)の息子のサレーの息子アブドゥラ、ということになる。

ちなみに、私が聞きまわった限りの範囲だが、ちょっとアラビア名の意味をご紹介。

男名( )内は意味
フセイン(美)
ハッサム(善)
ジャマル(美)
ムフシン(慈善)
サイード(幸)
アリ(高)
アフムド(称賛)
モハメッド(称賛、感謝)

女名
ザフラ(花)
ジォハラ(宝石)
ヤスミン(ジャスミン)
ノラ(光)
ヒュダ(神の手引き)
ライラ(古代からのアラビアの飲みものの名または夜)
イブティサン(ほほえみ)
パスマ(ほほえみ)

「ハルム・アラビアの夢」 大和出版より

「胡」のつくもの

その昔、ペルシャ(現在のイラン)・アラブ一帯は中国人に「胡」と呼ばれていた。
だからこの地から運ばれてきた「胡麻(ごま)」、「胡瓜(きゅうり)」「胡椒(こしょう)」などに「胡」の漢字がついているのだ。

あぐら座りも「胡坐」と書かれるが、今もこの地域では正式な座り方だ。
女性も床でくつろぐときは「胡坐」をかく。

喜拾-持たざる者には与える

貧乏人には、食事やお金を与える。
イスラム国家では、いたるところで道端の貧しい人々に金銭を与える姿を目にする。
助け合いの精神であり、水のように、「あるところ」から「ないところ」に富を流すという教えだ。
この教えがあったために、ここまでイスラム教が急速に普及した、とも言われている。

与えられた人は、一般的に「有難う」とは言わない。
「あなたは私に与えたお陰で、徳をつんだ」から、である。

 

「不思議探検 サウジアラビア」大和出版 より