砂漠の民のルール

一見、とっつきにくく、怖そうに見える。
しかしその実、その人となりは、とても温かい。
厳しい自然の中で暮らしてきたからこそ、外には厳しく、中には優しい。
いったん心を開けば、義理人情にあつい、とても気持のいい人たちだ。

砂漠の民のルールとして、
「旅人には水を与えよ、食事を与えよ」という言葉がある。
砂漠で迷っている人を見つけたら、相手が誰であろうとも貴重な水をふんだんに与える。
それがルールだ。
相手がたとえ、敵であろうとも、素性は聞かない。

困っている人は、見ず知らずの人でも助ける。
スーク(市場)で小物入れを置き忘れたら、長い距離をずっと走って追いかけてきて、届けてくれた子供。
すぐに立ち去ろうとするその子にチップを渡そうとしたら、決して受け取らなかった。

「○○がなくなった‼」
と騒ぐと、すぐに人々が集まってきて、「なんだ、なんだぁ?」とばかり必死で探してくれる。
いつの間にか、「ワタシ、少し日本語話せます」という人まで登場する。
おせっかいなまでに親切な人たちは、「見て見ぬフリ」をしないのだ。

困ったことがあったら、その辺の人に英語でも日本語でもいいから、とにかく聞いてみる。
言葉が通じなかったら、その人はきっと誰かの言葉の通じそうな人を連れてきてくれるだろう。

当たり前のことを、当たり前として受けとめている人々。
なんだか、忘れかけていた「昭和のあのころ」を思い出させてくれる。

 

「不思議探検サウジアラビア」 大和出版より