イスラームの刑罰

イスラームの罰則が非常に厳しいことは、よく知られている。
脅かすわけではないが、万が一にも無知から法を犯すことのないよう、簡単に刑罰を紹介しておこう。

賄賂、利子の取得、文書の偽造、詐欺、偽証、軽い殴打、少額の窃盗などに対する刑を「タアズィール刑」と呼び、ムチ打ち、禁固刑、財産没収などが科せられている。これは、裁判官が自らの力量でその刑の重さを決める。

これに対し、クルアーン(コーラン)などで言及されているために量刑を変更できない「ハッド刑」というものがある。たとえば、飲酒すればムチ打ちの刑、窃盗は手首切断、追い剥ぎ・強盗は右手・左足の切断、故意の殺人ともなれば死刑である。

また目撃証人4人の証言や本人による4回の自白によって姦通罪が確定した場合、未婚者であれば大衆の面前でムチうち100回、既婚者でなら石うちによる死刑である。
しかし、これらは、あくまでイスラームの基本刑罰なので、国によっては事情はさまざまである。普通にビジネスをしている限りは、何ら支障はない。
また、このような刑罰が厳しいからこそ、一般的にアラブ社会は治安が良いのだ。

「アラブ人の心をつかむ交渉術」 河出書房新社より