どんなコネでも活用すべし

アラブ社会では「飛び込み営業」や「一見さん」はほとんど相手にされない、と言っても過言ではないだろう。
ところが逆に、誰かの紹介やツテをたどってアポを取ると、とたんに態度が変わる。日本でも、病院や料亭、美容院などに行く時に○○さんの紹介だと言っておくと偉い人があいさつに来てくれるのと似ている。

相手の立場になって考えてみれば、そりゃあ、素性の知れないヤツよりは安心だろう。どんな小さなコネでも構わないので、紹介者を探すことだ。
アラブ人はだいたいおせっかいで世話好きなので、周りの人に、
「○○を紹介してくれる人はいないだろうか?」
と言ってまわっていると、誰かしらがツテを探してきてくれる。知り合いの隣人の親戚が紹介してくれるそうだ…というように、一見まったく無関係なつながりでも構わないのだ。
紹介者がいると、その紹介者の顔、メンツをつぶさないために、律儀に話を聞き、対応してくれるのが、アラブ人である。

紹介してくれる人は誰でもいい。宿泊中のホテルのオーナーや支配人、たまたま入った店の気の良いご主人、どんなチャンスも逃さずにまずは世間話をし、
「実は困っていることがあるのだけど・・・」
と切り出せば、たいていは親身になって話を聞いてくれる。とにかくコネを探してみよう。

アポをとって一度会ってしまえば、こっちのもの。お土産でも持って訪れ、興味をそそるような情報を出し、次に会う日時を決めてしまう。
そして二回目に会う時にはもうあなたは「一見さん」ではない。親しみを込めて大げさにあいさつし、気持ちを柔らかくした上で、さあ、いよいよ本題にとりかかることができる。

 

「アラブ人の心をつかむ交渉術」 河出書房新社より