ここが違うよ、サウジ人

サウジ人と付き合っていて、「似たところが多いけど、こういうところは違うよなぁ」とつくづく思うこともある。
初対面の人には「大切なもの」は渡さない、預けないのだ。

長年、某サウジ関係会社に勤め、多くのサウジ人に接してきたある日本人女性は、こう呟く。
「秘書の私にも最初はパスポートを渡さないから、航空券手配が大変。
いったん心を開けばやりやすいのですが、他人を信用するのに時間がかかるのは、どのサウジ人も同じでした。仕事も自分で抱えてしまいがちです。」

人に財産を預けることが苦手で、すべての家財道具を持ち歩いたという遊牧民の子孫達は、「娘を女学校に預けようとしない」「飛行機に乗るとき、すべて手荷物にすると主張した。さらにエックスレイ検査機に自分も入ろうとした」
「銀行にお金は預けず、金の腕輪に換えて全財産を腕に付けておく」といったエピソードに、こと欠かない。

預けたら返してもらえないかもしれない、という疑心暗鬼からであろうか。
確かに、「疑い」をもって接していると「失敗」や「被害」に遭うことは少ない。
イランも含め八年近く中東に住んでいた私は、「性格が悪くなった」と言われるくらい、幸か不幸か「慎重」になった。

お互いが信じ合うことで農作業を協力してやってきた日本人も、もう少し疑い深くなれば、「振りこめ詐欺」や「海外での盗難」被害が減るかもしれない。

「不思議探検サウジアラビア」 大和出版より